今回の計画では南アルプスの北玄関である戸台口(仙流荘)へ夜行バスで向かい、車道を7.5㎞、さらに林道の始点・杉島ゲートから25㎞、合計32.5㎞歩いてやっと登り口の熊沢出合までたどり着く。翌日三峰川を徒渉して登山道のない尾根を詰めて山頂へ向かい、下山後、熊沢出合でさらに一泊して翌日往路を戻る予定で出かける。
一日目、28㎞を歩く
夜行バスで寝ぼけた体に気合いを入れて歩き始める。実は長い車道・林道歩きを想定して7月に万座温泉近くの御飯岳にて約12㎞(往復24㎞)の車道を歩いた。足の裏にまめができた。まめ対策を兼ねて7月末に自宅から国道17号線を往復20㎞歩いて準備(?)した。
テントを担いだ約17㎏のザックが少々重いが地形図を片手に順調に歩ける。杉島ゲートからは樹林帯の林道(車道)になって少しは涼しい。約1時間歩いて10分休憩のピッチで歩く。三峰川第二発電所を過ぎやっと大曲ゲートに到着する。以前はこの場所まで車で入れたそうだ。此処で昼食タイムとする。
足裏が痛くなってくる。ザックも少しずつ重く感じ、肩が泣きそうになってきた。大曲を過ぎると両側が切り立った岩場で、下を流れる三峰川には淵が連続する巫女淵となる。延命水を過ぎ塩見岳登山口に着く。三峰川林道が閉鎖中の今は、此処から塩見岳を登る登山者は皆無に近いだろう。大黒橋を渡りしばらく歩くと作業小屋が有った。休憩して内部を偵察する。畳敷きで快適そうな小屋だった。時間はまだ早いので先を急ぐ。が、此処から空身でアタックした方が楽かもとも思う。良い天気が少し暗くなり雷鳴が鳴り出した。雨を予想して5~6分歩いて引き返し、作業小屋泊まりとする。案の定暫くして猛烈な雨が降ってきた。正解だった。
二日目、黒檜山アタック
イワナ釣りの釣り人と一夜を過ごし、早朝に小屋を出発する。本日も良い天気だ。涼しい朝の空気を感じながら昨日痛めた足裏は、テーピングテープを貼り付けて順調なようだ。熊沢出合が判るだろうかと地形図を思い出して歩く。取水口から暫くして熊沢を確認する。徒渉点もネットで見た地形を確認して林道から河原に降りる。ズボンの下半分を外して徒渉に移る。この時トレランシューズを沢向こうに先に渡しておきたくて投げる。うまく対岸に着地した。と、思ったらバウンドして転がり沢に落ちてしまった。一瞬やばい!流されていく靴を必死で追いながら捕れないと裸足では帰れない!20~30㍍追いかけてやっと捕まえた。ホッとする。裸足の足裏の痛さはあまり感じなかったが、捕まえ終わって猛烈に痛さを感じた。大失態である。
靴をザックに入れて徒渉、暫く気を落ち着けてから登り始める。ネットでは尾根の先端から忠実に登っているが、先端は岩壁で崖になっている。暫く登り口を探しながら尾根を回り込み登り出すが、どうしても登れそうにない。徒渉点近くまで引き返す。約30分のロスになった。尾根の崖手前にある青テープに導かれてザレた岩屑の急坂を腹ばいに近い感じで強引に登る。約100㍍でやっと右の小尾根に乗れた。灌木に捕まりながらさらに登ると明瞭な踏み跡のある尾根に出た。後は尾根を忠実に辿って登ればよいと一安心した。
踏み跡程度の尾根で地形図と高度計を眺めながら登る。踏み跡を失うと立ち止まりテープを探す。1870㍍分岐は下りで左に曲がるので下り用に自分の赤布を付けておく。さらに2054㍍地点は下りで右に折れる地点で此処でも赤布を付ける。木々の間から前方に黒檜山が望めるがまだ遠い。一度下り登り返すとシャツが枝に引っかかる灌木の藪と倒木帯が続く。さらに岩場多くが出てくるも巻道を見つけて登る。山頂近くは尾根から逸れて左側の谷を登るように進み、稜線に戻って左に数分で山頂に到着した。一寸した小平地の中央に三角点が有る。樹林の為に展望はない。疲れて大休止にする。
下山は往路を忠実に戻る。登りでは感じなかった小尾根に注意しながら、赤布と青テープをいつも探しながら下る。下りでは思った以上に傾斜が急に思えて、こんな所有ったかな!と、随所で立ち止まる。が、何とか徒渉点まで帰れた。登りに約4時間、下りは2時間40分で歩けた。徒渉して大休憩する。しっかりと疲れたが、長年の宿題を達成出来た充実感に暫し浸っていた。足裏の痛さも気にせず快調な足取りで作業小屋に帰り着く。残りのお酒で乾杯!
三日目、林道を戻る
陽が上がる前の涼しい時間に歩くために早めに出発する。杉島ゲートまで約20.5㎞、距離程表示を参考に約5㎞ピッチで歩く。休憩を含めて4時間50分で歩き通す。途中で自転車利用の渓流つりの人二組4名、歩きの沢登りらしいグループ6名とすれ違う。ゲートを越えて座り込む。この後は灼熱の車道歩きが待っている。気を取り直して歩き出す。ゲートから約1㎞付近にバスが停まっている。淡い期待を抱いて早足で歩く。長谷循環バスだった。発車時間も間近で涼しいバスに乗せてもらう。もう歩かなくて良いんだ!仙流荘で温泉に入り3日分の汚れと疲れを洗い流す。バス時間まで約4時間を乾杯、昼食、うたた寝で過ごす。バスで伊那市へ出て、飯田線、中央線で帰る。良かった。